海沿いの道を球場に向かって歩く。
日が暮れてきて街全体のトーンが暗くなり、ますます綺麗に見える。
バスターミナルを過ぎるとユニフォームを着たりグローブを持ったりした人たちがぞろぞろ歩いている。
プログラムを売る声や食べ物屋の呼び込み、店から溢れる陽気な音楽が鳴り響く。
球場はすでに光に包まれていた。
アナウンスや歓声が聞こえてくる。

おお、ついにやってきたぞと思った瞬間、ファーーンという耳をつんざかんばかりの音が・・・
セーフコフィールドのすぐ横を通過する貨物列車が鳴らす汽笛だ。
試合中継でよく聞いてはいたのだが、生で聞くとやっぱり違う。
近くにいた警官も耳を塞ぐほどの迫力だった。
手荷物検査を受けて入場するとお姉さんがマリナーズ・カレンダーを配っていて、すかさずゲット。
階段を上って自分のシートを探す。
球場内には仕切りがなく、バックネット裏から外野自由席まで自由に歩き回ることができる。
いろいろ見て回りたくはあるがとりあえず席に着こう。

ライト側のフィールド席に座ると、目の前でイチロー氏が黙々とストレッチしている。
思いの外選手との距離が近く、臨場感がある。
日本の球場の外野席からの眺めとはずいぶん違う。
周辺の観客は何人かのグループで来ている人が多く、すでに大盛上がりだ。
そんな中スコアブックを付けている人も結構いて、野球が好きなんだなぁと思う。
飲み物や食べ物の売り子さんがひっきりなしにやって来るのだが、ポロシャツとチノパン姿の男性が多い。
しかも結構お歳が上の方もいる。
各々自分のスタイルがあるらしく、独特の節回しで歌いながら場内を回ったり、攻守交代の時の音楽に合わせてふりふり踊っちゃったり。
ピーナッツ売りのおじさんは、買い手を見つけると遠くからピーナッツ袋を投げて、相手がキャッチするとナイスキャッチ!と声を上げ、周りの観客はそれを見て歓声を上げて拍手しちゃうなんていう光景があって、とにかく楽しい。
楽しむこと、楽しませることにかけてはやっぱりすごいな、と思う。
この日はアスレチック戦で、共に投手の調子がよかったのか、はたまた野手の調子がイマイチだったのか、試合展開そのものはかなり地味なものだった。
5回ぐらいまではシートで観戦していたが、その後は場内を一周してみることにした。
入場した時に上った階段を下りた先にはブルペンがあって、控えピッチャーが試合の行方を見守っていた。
選手と客を隔てているのは金網一枚で、その近さに驚く。
もちろん警備員さんが見張ってはいるけれど。
ピッチング練習をしていると当然客からのヤジが飛ぶわけで、こりゃ精神的にきっついだろうなーと思う。
ちょうどその時監督からの電話が入り、ハリスという救援ピッチャーが肩を作り始めた。
ボールがキャッチャーミットに収まる音が響き、それまでののんびりとした空気が一気に引き締まる。
その後先発ピッチャーが持ち直したため結局出番は来なかったのが残念だったが、日本ではまず見られないシーンを見ることができて感動した。
バックネット裏には食べ物、飲み物の売店が集まっている。
イチロールなどという看板もあったっけ。
アメリカの野球場に来たらホットドックを食べなくちゃ。
先ほどのチーズケーキのおかげでお腹は全く空いていなかったけど、2人で1本ならいけるだろう。
メジャーリーグ・ドックという奴を買ってみる。
売店のお姉さんはちょっとビヨンセに似た女の子でなかなかの美人だった。

ホットドックの味は・・・省略。
でもねぇ。
球場内どこを見ても、従業員もお客さんもとにかく笑顔で楽しそうなんですよ。
その雰囲気でこちらもなんか楽しくなっちゃうんですよね。
それはすごいことだと思うし、日本の球場も是非見習って欲しいなぁ。
7回が終わって時刻は9時を過ぎた。
バンクーバーまでの時間を考えるとそろそろ出た方が良い。
後ろ髪引かれる思いで球場を後にする。
さよなら、セーフコフィールド。